日本の高齢者は自立度が低い?!

 

こんにちは、Nurse life better ~ 世界中の看護師さんと繋がりたい ~ グループ開設者の Nozomi です。

今回は、日本の高齢者の自立度についてお話したいと思います。

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ADLsとは??

ADLsとは "activities of daily living" 日常生活自立度のことです。

日常生活自立度というのは何かと言うと、人間が生活していくのに最低限必要な動作で起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容 の8項目があります。

つまり、

朝目が覚めてベッドから起き上がる動作が出来るかどうか

ベッドからトイレや洗面所へ行き、歯磨きをしたり、顔を洗ったり、トイレで用を足したりすることが出来るか

パジャマから普段着へ着替えることが出来るか

食事は自分で食べることが出来るか

また、自分でお風呂に入って、髪や身体を洗うことが出来るか

 

介護、看護を提供する前には、患者さんがどの程度介護を必要としていて、障害が現れている部位や機能の状態を評価します。

 

オーストラリアでみた高齢者の現状

私は現在、オーストラリアのある高齢者施設で看護助手として働いています。同時に看護大学生というのもあって、病院実習にも行きます。

そこで私が気づいたのは、

あれ??日本の高齢者よりもはるかに自立度が高い!!

寝たきりの患者さんがほとんどいない! 急性期病棟にも寝たきりでオムツ交換を必要とする患者さんがほとんどいない! 

 

私は日本で看護学生をしていたころ、療養型病院で約4年働いていました。日本で正看護師となり、看護師として臨床に出た時も内科病棟ということもあり、急性期という位置付けではあったものの、慢性期の高齢患者さん、寝たきりでオムツ交換や体位変換が必要な患者さんがたくさん入院していらっしゃいました。

私は主に病院勤務だったので、日本の介護施設や訪問看護の現状は看護学生時代に行った実習を通してのことしかわかりませんが、

日本にいたころの私の感覚では、

  • 不可逆的に経口摂取ができなくなってしまったら経管栄養(NGチューブや胃ろう)や高カロリー輸液から栄養をとる
  • 痰の吸引
  • チューブの自己抜去、転倒転落の恐れがある患者さんには抑制帯を使用する(抑制帯の使用は日本看護協会のガイドラインに沿って最低限の使用に留めるよう努めている)

などがある種、これが看護だと思っていました。

胃ろうや高カロリー輸液の開始によって、チューブ類を意識せざるをえなくなり身体活動量はおそらく低下します。また抑制帯の使用も活動を制限するものです。活動量が低下してしまうと、痰を自力で吐き出す力もなくなってしまいますし、頻回の吸引によって気道を傷つけてしまい、余計に分泌物が増えてしまうことがあります。

寝たきりは身体的精神的障害、老化による不可逆的変化によってADLが低下した結果起こります。様々な原因がありますが、上記のような治療を優先するがゆえに寝たきりの患者さんが増えてしまっているのではないか、という見方も出来ます。

 

しかし、オーストラリアの介護施設、病院では

不可逆的に経口摂取ができなくなってしまった患者さんに対して、延命治療の意味も込めた胃ろう造設や高カロリー輸液のためのCVラインは行われておらず、痰の吸引もしません。もちろん抑制帯を使用しているのも、急性期病棟や老人ホームなどの高齢者施設においてみたことがありません。(精神科病棟では使用されることもあるようですが..)

 

率直に私が受けた印象は

オーストラリアは色々なところにお金をかけているなぁ....と。

 

オーストラリアでも人手不足と言われていますが、日本の医療業界に比べればはるかに働き手はいます。オーストラリアは観光地としても人気が高く、世界で住みたい国の上位にランクインしているほど人気の国です。多国籍文化というのもあり、世界中からオーストラリアへ移住を目指して渡豪する人たちが集まります。オーストラリアで永住権を申請したいと、医療の勉強を始める人もたくさんいます。

 

人手がある程度確保されていれば、高齢者一人ひとりへ十分なケアが行き届きますし、安全安楽な環境を提供できます。オーストラリアでは、高齢者介護の問題が取り沙汰され始めた初期のころから、高齢者介護への資金調達、人材確保などの取り組みを積極的に行なっていたようです。なので、以前からある程度人材が確保されている環境でケアを受けてきた高齢者さんたちの活動量が多いのは頷けます。

 

また移乗をサポートするためのリフトや体位変換するためのスライドシートの積極的な利用など、日本に比べて介護者側も介護を提供しやすくなっており、介護者自身の身体的ダメージも日本の介護者に比べて少ないのではないかと思います。(日本はほとんど患者さんを抱きかかえて移乗しますからね、、私がそのように患者さんを移乗させようとしたら腰を悪くすると怒られました)

 

人手が足りないと、高齢者の活動を支えてあげられる人が足りないわけですから、もちろん高齢者の活動量低下に繋がり、結果的にADLの低下、意欲低下、合併症のリスク増加、嚥下機能や内臓機能低下による栄養摂取低下...等々になってくるわけです。

また転倒転落防止のためにも、抑制帯を使用してきた日本の歴史も関係し(浜端賢次, 藏野ともみ, 兼光洋子, と 清水那智子. (2002)の論文によると、日本では明治時代から抑制帯の使用が報告されており、抑制帯を使用するルールが現代のように厳密に定められておらず、看護師は安易に使用していたとのこと)、長期にわたっての人材不足問題が、こうして日本とオーストラリアの高齢者の自立度の違いとしてあらわれているのではないか、と感じました。

 

つまり、現在オーストラリアで生活されている終末期の患者さん、利用者さんがもっともっと若かった頃、健康的な成人から老年期に入り、または慢性期疾患を患うようになり、看護介護が必要となり始めたころから、すでにオーストラリアでは医療介護提供者の人材がある程度確保されていたことで、当時の身体活動量を低下させないような看護介護を提供することができていた、ということだと思います。

身体活動の低下によって寝たきりとなってしまうわけですから、慢性疾患をコントロールしていくサポートも、残存機能の維持のための積極的な介入も、人材が確保されていないと十分に提供することができないのは当然ですね。

 

人材不足の現状は、日本の医療、看護介護の現状や考え方が変わらないとどうしようもない問題です。

しかし、政府も他国から看護介護の人材を確保しようと動き始めています。今まで日本人のみで行われてきた環境で、他国の人材を受け入れるには、それはそれで様々な問題が浮上してしまいそうですが、

私は日本の医療、看護介護の現状をとにかくよくしていきたい、と思っています。他国から医療者が来ようと来なかろうと、どのようにしたら日本の現状が良くなるかを考えています。

 

SNSが普及した現代社会、実際の in person で人脈を広げていくよりか、ソーシャル上で共通テーマを通して人脈を広げて行った方が早いし大きな影響力となると思っています。みなさんで、力を合わせて日本の医療業界、看護介護業界を改善していきましょう。

 

ぜひシェアよろしくお願いします

 

参考文献

浜端賢次, 藏野ともみ, 兼光洋子, & 清水那智子. (2002). 「抑制帯」 研究の傾向. 川崎医療福祉学会誌12(2), 439-444.